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共同時空第108号(2022年9月号発行) Contents(ページ番号をクリックすると記事に飛びます)


1お薦めの本を読む根本拓真
2-3
:ふじだなの本棚からvol.11:「「探究」を探求する」(永田裕之

2-3:新着案内

4面-1:学校図書館は今:採用5年目のとりとめのない記録(河村知佳)
4面-2:雑誌紹介:『季刊教育法NO.213』



1面

お薦めの本を読む

神奈川県高等学校教職員組合 執行委員 根本拓真

図書室で本を借りる

 私自身は、小さい頃からよく本を読む方だったと思う。小・中学生の頃は、自分で本を買うことはまずなく、学校の図書室を利用していた。図書室の、たくさんの本に囲まれた空間が好きだった。しかし、私は、読みたい本を自分で選べなかった。タイトルを見ても、表紙の絵を見ても、決め手に欠いた。結果いつも誰かが薦めてくれた本を読んだ。お薦めを聞くことが私に人との関わりを与えてくれた。この本質は今も変わらない。先生方に教えていただいたものを読むことが多く、他は書店のPOPを参考にしたり、本屋大賞ノミネートの本だったり、店員さんに伺うこともある。結局は誰かのお薦めだ。薦められた本を受け取って読む。主体性がなく優柔不断だと笑われるかもしれない。皆さんはどうだろう。何をもとに読む本を選ぶのか。

本を読む元気があるか

 教員となってからも学校の図書室はよく利用している。誰かのお薦めを読むとはいえ、好みはある。初任校でのことだが、司書の先生にお薦めの本を伺ったら「小説とかがいいか啓発本とかがいいか」「明るいのと暗いのとどっちがいいか」とカウンセリングのように好みを聞かれ、私自身の好みが「ファンタジーっぽい明るい話」であることがわかった。そして、好みに合うであろう本を薦めてくださった。定期的に本を借りていたが、ある時全然借りなくなった。しばらくすると司書の先生に「最近疲れてるね」と言われた。驚いた。本を読めないのは仕事で時間がなかっただけだと思っていた。「通勤とかで時間があっても、元気がなきゃ本って読めないんだよね」と言われて全くその通りだと思った。疲れていると、目が滑ってしまって、文字が追えない。内容が頭に入ってこない。それからは、本を読めるかどうかを元気のバロメーターの1つにしている。

高校生のときの共同時空

 私が高校1年生の頃(2003年)の共同時空の記事を読んでみた。今より厚い共同時空には東京朝鮮中高級学校に通う生徒が電車内でチマ・チョゴリを切り裂かれる事件について書かれていた。高校生の頃の私は差別問題になど関心もなく、事件の報道の記憶もない。ただ漠然と自分は差別をしないという思いは当時の私も持っていた。誰とでも仲良く。この頃の私が思っていたこと。今は、狭山事件の再審を求める集会や国籍条項撤廃の要求などの活動に参加している。高校生のときのような漠然とではなく、具体的な活動をしている。19年前も共同時空は存在し、当時の差別問題を教えてくれる。誰かが残したものを別の誰かが読み、脈々と活動が繋がり続け、今がある。

私のおすすめ

 お薦めを人に聞いてばかりの私から、1つお薦めしたい。島崎藤村の『破戒』である。原作を読んだことのない方は、ぜひ映画から観てほしい。その後原作を読んでほしい。ほぼ忠実に再現された映画だが、決定的に異なるところがある。その違いこそが、継承であり、今の世に映画化して上映する意義なのだと思う。そのまま伝えるだけが継承ではないと映画と原作セットで私に教えてくれた作品だ。                

(ねもとたくま)

※神奈川県内の「破戒」上映は終了してしまいました。機会を見つけて鑑賞していただければと思います。

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2-3面


ふじだなの本棚からvol.11

「探究」を探求する

(※太字は県民図書室所蔵資料)


2-3面

キーワードは「探究」?

 2022年実施の新指導要領のキーワードは「探究」である。「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」になったほか、各教科の目標等にも「探究」あるいは「課題を見つけ、解決する」といった表現がみられる。そこで今回は「探究」及びその周辺に的を絞って資料を紹介したい。

「探究」というキーワードを鳥瞰する

 「探究」はそれだけで存在しているわけではない。新指導要領の告示は2018年、実施は学年進行で2022年度からである。そして告示から実施までの間に、Society5型への対応(ICT活用を含む)、中教審の答申「令和の日本型学校教育」の提唱などと耳慣れない言葉が怒濤のように押し寄せている。

 こうした難しい言葉をときほぐし、私たちの頭の中に「絵図」を描いてくれるのは 『ねざす』(69号)の特集「中教審答申・令和の日本型学校教育―ディストピアを超えてー」『教育』(2022年2月号)特集「高校教育における〝公共性”を考える」などである二つの特集にはそれぞれ特色がある。『ねざす』は、2021年度の教育討論会の記録でもあるが、この討論会には、鋭く批判的に状況を捉える児美川孝一郎さん、現場で、校長としてあらゆる課題を受け止めなければならない柴田功さんや第一線の坂本和啓さんが参加している。異なった意見がぶつかり合っているので論点がわかりやすいと言える。こういうシンポジウムは他では余り見当たらない。

 一方『教育』は『ねざす』と同じ児美川さんの「高校教育はどこに向かうのか」という巻頭論文以外は個別の実践を提起している。児美川さんは論文の終わりに「この窮状にどう立ち向かえばよいのか」と問題提起をしているが、『教育』の5本の論文はこの「立ち向かい方」が提起されていると読むこともできる。元神奈川県立高校教員の宮田さんの論文もある。

「探究」と言えば図書館では?

 「探究」といえば「図書館」である。国際バカロレア(IB)認定校と言えば「探究」のモデル校みたいな存在だが、神奈川県内の公立高校として初めて「国際バカロレア(IB)校」の認定を受けた横浜国際高校の学校図書館司書、伊藤さんは『共同時空』104号で「国際バカロレア ディプロマプログラムにおける図書館ガイドライン)を紹介している。その冒頭には、「図書館は、教育課程を効果的に支えるものである。司書は、教科担当教員やカリキュラム担当者としっかり連携すること」と記されているそうだ。このガイドラインを踏まえて伊藤さんは 「学校図書館および司書に求められる役割は非常に大きく、司書と教科担当教員が、授業計画の時点から協働し準備を進めることは、単に知識を得ることにとどまらない〔学び方を学ぶ〕授業へと繋がっていきます。」と書いている。

 私たちは学校図書館といえば生徒のためのものというふうに思っているが、「生徒のための学校図書館」ができたのは戦後だそうだ。戦後改革期、「図書館中心学校」が新教育の理想と言われたという。(木下通子『読みたい心に火をつけろ』岩波ジュニア新書2017年)

 短い間ではあったが、自由研究という教科があって、総合的な、探究的な学習が教育課程全体で推奨されていたのである。NHKの「チコちゃんに叱られる」(2022年8月19日放送)でも、この「自由研究」が紹介されていた。

 学校図書館を活用した授業については1990年に出版された『図書館よ、ひらけ!』が多くの実践を紹介している。1990年と言えば30年も前の本だが、時代がこの本に追い付いてきたのだと感じる内容だ。おまけにこの本は神高教の図書館教育小委員会が作成したものである。該当する教科も理科、数学、国語、公民、地歴と多彩だ。

 ほかに塩見昇『教育としての学校図書館』青木書店1983年)にも実践レポートが載っている。

 以上のような「自由研究」「学ぶことを学ぶ」等々の考え方は1960年以降系統的な教育の隆盛とともに推奨されなくなる。その理由として「チコちゃんに叱られる」では「高度経済成長のもとで効率が優先されたから」と説明されていた。系統学習が高校教育課程の主流になったのは1960年告示の指導要領からである。

 系統学習は、国際学力テストでいつも好成績をとるという「成果」をもたらしたが、「生きて働く」学力ではないと批判にさらされていた。日本の高校をフィールドに書かれた『日本の高校-成功と代償』(T・ローレン サイマル出版会)では「彼らはよく聞き、即座に考えることを学ぶが、自分の考えを表現することを学ばない。話すことも書くことも推奨されていない。思弁とか、論争とか、多様な解釈が可能だということも授業では取り上げられない。」と批判されている。

 さいごに『学校図書館はカラフルな学びの場』(松田ユリ子 ペリカン社2018年)を取り上げたい。この本には学校図書館を舞台にした様々な「まなび」がある。それらは本当にカラフルで、系統的な学習の対極にある学びである。一つだけ紹介したい。

 2000年ころの、県立高校での出来事である。図書館の広報委員会が「日の丸・君が代」についての記事を掲載、生徒へのアンケート、所沢高校のOBへの取材、さらには管理職との意見交換などを行ったのだ。まさに連続学習会の趣があるが、その際広報委員長が書いた問題提起は一読の価値がある。さらにまだある。広報委員の一人だった生徒は卒業式にこれまでのロングヘアをベリーショートにしてきて皆を驚かせた上、式で司会が「皆様ご起立ください」といったとたん「ちょっと待った」と言ってマイクまで進み「日の丸と君が代」に対する思いを語り、そのまま席に戻ったという。まさに「カラフルな学び」、探究そのものの実践ではないか。          

付記 映像資料の「プロフェッショナル仕事の流儀 背伸びが人を育てる」(2007年放送)はいち早く「探究科」を作って注目を集めた京都の堀川高校が取り上げられている。 


|文責 永田裕之|

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『社会的排除に向き合う授業 考え話し合う子どもたち』坂井俊樹編著、2022、新泉社 

社会問題をとり上げる際には少数者・被害者の“当事者感覚”が、そして他者に対する共感から自己を見つめ直す営みが必要なのではないかという問題意識のもと、学校で行われる通常の教育実践(授業)でこの問題に迫ろうと考え、「社会的排除」という視点から多様な教育実践を試みた実践編と、研究者による考察編から成る好書(当会館の教育研究所所員加藤 将氏の実践も収録)。

『この国のかたちを見つめ直す』加藤陽子著、2021、毎日新聞出版 

なぜ、日本学術会議の名簿から6人が除外されたのか? 政権が個人を「弾圧」する。その隠された真意とは? 日本近現代史の泰斗が歴史学の手法で解き明かす。「私は、この国民世論のまっとうさに信を置きたい」という言葉が印象的だ。

『ネットいじめの現在(いま) 子どもたちの磁場でなにが起きているのか』原 清治編著、2021、ミネルヴァ書房

ネットいじめに関する大規模調査の報告と分析から見る、SNS時代の子どもたちの実態。学校という「磁場」が及ぼす影響に注目し、リアルと地続きになったネット上のつながりを読み解きながら、いかに子どもたちを守るかを考える。


4-1面

採用5年目のとりとめのない記録

河村知佳

 入庁式で渡された辞令は相模原総合高校。関内まで迎えに来てくれた副校長と延々横浜線で橋本へ。ランチにパンを買ってもらうも、緊張でほぼ喉を通らない。前任者との引き継ぎは1日しかなく、分からないことだらけ。ジャージを着ている先生=体育科だと早合点し、「この学校は体育の先生が多いんだな~」などと思っていた私も、今やジャージにバンドTシャツで作業している。そんな風に、良くも悪くも様々なことが変化した5年目の記録。

~横のつながり~

 一人職種である学校司書にとって、会議や研修は単なる出張ではなく、同業者と直接会える貴重な機会である。会議の帰り道で先輩からアドバイスや励ましをもらう時間は、何物にも代えがたい。コロナ以降はオンラインミーティングも盛んになり、休日には有志学校司書の勉強会にも参加している。なかなか会えない他地区の人とも顔を見て話せるので、コロナ禍でも学校司書の横のつながりは生まれ続けている。

~オンラインへの対応~

 最近の学校図書館関係の研究会では、「1人1台端末時代の図書館」とか「オンラインでの図書館サービス」といったテーマが熱い。実際、夏に県立学校司書に実施したアンケートでも、このようなテーマでの研修を求める声は多かった。図書館という場について、司書という職について、新たな価値やスキルが求められていると感じる。

~無力感~

 ロシアによるウクライナ侵攻が開始された頃、ある生徒が「どうしようもなく怖い」と漏らした。自宅のテレビから流れ続ける映像が脳裏に焼き付き離れない、と。自分がどんな言葉を返したのか思い出せないが、その時感じたどうしようもない無力感だけが強く残っている。平和のために、学校図書館が出来ることはなんだろう。情報に惑わされないための学びを提供することだろうか。先日の講演会で聞いた「デジタルシティズンシップ」という言葉がしっくりきた。

~再編統合~

 本校の図書館は2層式になっていて、部屋の中に上階へと続く階段がある。この珍しい造りの図書館を目当てに入学を決めた生徒もいる。私も、他校とは違った魅力のある「さがそう図書館」で働くのが楽しかった。でも、それもあと少し。今は図書委員の生徒たちと『生徒版完校記念誌』を作成している。再編統合の作業を通して徐々に虚しさを感じ始めているが、相模原総合高校最後の日には一体どんな気持ちになるのだろう。

(かわむら・ちか 県立相模原総合高等学校)

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4-2面

雑誌紹介:『季刊教育法NO.213』

エイデル研究所/2022.6

今号の特集は「開かれた、参加と共同の学校づくり」と「『支えあう社会』の教育」の2本。

特集2「『支えあう社会』の教育」には、森田久美子「ヤングケアラーの教育保障とその対策」、埼玉県の進んだ取り組みの現場報告である間瀬田結実「学習支援事業の法制化に伴う変化と課題」、神奈川県での実践を踏まえた高橋清樹「外国につながりのある子どもの教育保障を進めるために」の3本が掲載されている。高橋さんは、元県立高校の教員で、今も若者の支援の現場から、外国につながる子どもたちの置かれている現状と課題を明らかにしている。 その他「事例で学ぶ 学校とスクールロイヤーの連携」で取り上げられている体罰の事例や「免許更新制廃止法案の検討」など現場の関心の高いテーマも並ぶ。また巻頭エッセイで教育学の広田照幸日大教授は、「横並び文化を克服するために」として「教育行政の担当者や教職員がさまざまな法規を読みこなして、自由度や裁量の余地を自分でみつけだす」ことをご自分の体験を叙述しながら勧めている。「既存のルールをよく読み込めば、できること、やってみる価値のあること(及び,思いきってやめてもよいこと)がいろいろ発見できる」との提言は興味深い。

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『共同時空』第108号(2022年9月発行) 神奈川県高等学校教育会館県民図書室 cropped-sitelogo-1.gif

発行人:馬鳥敦
編集:樋浦敬子
印刷:神奈川県高等学校教育会館
発行:神奈川県高等学校教育会館県民図書室

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