第98号

「ブラック企業」効果!?
-DVD「ブラックバイトに負けない!―クイズで学ぶしごとのルール」の使い方-
阪本 宏児 

 「ブラック企業」効果とでもいうべきだろうか。私たちにとっては「働き方改革」が、生徒たちにとっては「ワークルール」学習が、自然に受け容れられる素地ができつつあるように感じる。本当は昔から定着していてしかるべき事柄なのだが、そうはなってこなかったのが現実である。この効果だっていつまで続くかわからない。折角の機会を逃したくないと思う。
 私が勤務する総合学科高校では、「総合的な学習の時間」とは別に、教科書なき必修科目「産業社会と人間」が設置されている。勤務校では総学+産人5単位分を「未来探索」と名付けて一体的に運用しているが、開校から13年を経た今日に至っても、コンテンツの「探索」は続いている。そこで2年前から、ワークルールや雇用問題を考える学習をかなり大胆に取り入れてみた。
 表題のDVD作品は県民図書室から借用し、継続的に活用している教材の一つである。監督はドキュメンタリー映画「フツーの仕事がしたい」で注目を浴びた土屋トカチ。期待度高めで本作を視聴してみると、ごく穏当な教育ビデオ風の出来映えだったりするのだが、その分使いやすい。○×中心のクイズ形式で、実例を交えながらワークルールに関する解説が進んでいく。授業で使用する際は、解答欄と正答欄、それに正解を聞いてのメモ欄を加えたワークシートを1枚用意してほしい。シートを回収すれば、ワークルールに対する生徒の認知度合いもわかるし、アルバイト実態を垣間見ることもできる。例えば、Q4「時給の計算単位は15分単位?」という質問(正解は1分単位なので×)に対しては、「知っていた」とする生徒も少なくない一方、「バイトが15分単位と言われていたので初めて知りました」と記す生徒もいたり、Q10「誤って皿を壊した  弁償は当然?」という質問(正解は×)に対しては、「サ×××ヤではそういうことはないので良いバイトだと思った」といった具合だ(ちなみに、一昨年は同じFC店について「皿を割ると引かれる」と書いていた生徒もいたが…)。
 当初は外部講師の講演とセットで上映していたが、今年度は生徒たちがアルバイト体験を共有しあうグループ学習「バイトで困ったこんなこと」(この授業については『ねざす』No.56、2015年参照)とセットにして、バイト先での疑問に対する解答例として本作を使用してみた。バイト率8割を誇る本校生徒たちの反応から、ある意味「ブラックバイト」慣れしている状況や、「知る」ことが必ずしも行動につながるわけではないことも思い知った。とはいえ近い将来、より困った事態に直面した際には、こうした自己参照的な学習経験こそが生かされてくるのではなかろうか。
 ところで、授業導入時に私が何より懸念したのは教員側の受け止めであった。実際、「こんな社会科みたいな内容、私にはムリです」と若手教員の一人からはっきり言われたこともある。そもそも私たち自身が労働無法地帯の住人だけに、「残業代なんてもらえなくても仕方ない」とどこかで思ってはいないだろうか。幸いそれは杞憂だったようだ。近年の採用者には民間企業経験者も多く、むしろ狭義の労働法教育にとどまらない、「働き方のリアル」を生徒たちに示す貴重な時間となっているようにみえる。
 「ブラック企業」効果が持続しているうちに、授業内容も私たちの働き方も、新たな一歩を踏み出せればと思う。
(さかもと・こうじ 鶴見総合高校)


(1)
■ 続・ふじだなのほんだなから―県民図書室所蔵の資料案内―《1》 ■
60年前の「高校神奈川」『定期大会議案書』を発掘!

■ 再登場にあたって
 本号から再スタートする「続・ふじだなのほんだなから」は、本紙編集も兼任する資料整理委員会メンバーによるリレー連載となる。各委員が県民図書室にある図書や資料をそれぞれの視点から取り上げ、紹介する。ご愛読いただけたら幸いである。
■ 資料整理作業中に見つけたお宝資料
7月から、図書室内やその前廊下などに山積みされ、ほこりにまみれた段ボール箱に押し込められていた古い資料の整理をし始めた。司書の佐久間さんの助言を受けながら、それらを取り出し、項目ごとに分類したうえで、開架式書架に並べ、閲覧できるようにしようと考えている。すべての資料を見たわけではないが、最古の資料はおよそ70年前のもの。筆者の「鑑定」では、これは教育センターもビックリのA級資料ではないか。
前述のA級のお宝資料もいずれ、当欄で紹介したいと思っているが、今回は60年前の組合機関紙「高校神奈川」を取り上げてみたい。
■ これが旧教育会館の平面図だ!
高教組は、結成(1948年10月3日)以来数回、組合事務所(本部)の引っ越しをしている。そして現在地の藤棚に教育会館を構えるようになったのは、56(昭和31)年。56年といえば、今春退職した方々が誕生した年だ。木造平屋造りの教育会館が取り壊されたのが82年だから、この旧会館のことを知る現役組合員もごくわずかに違いない。
古い教育会館の設計図面が掲載されている、当時の「高校神奈川」(1956年4月28日発行。B5両面印刷)を見つけた(次ページを参照)。周知のように、当会館の敷地は神中(現希望ヶ丘高)の跡地(約200坪)である。伊藤博県議(当時。元高教組委員長)の尽力で、この土地を県から借り、たまたま移転することとなった県所有の建物(74坪)をそっくり買い取り、この建材(古材)を六角橋から藤棚に運び、旧会館を建設したのである。
当時、39分会、組合員1,700名。大会議室は22.5坪とある。筆者は2年目の71年から3年連続で分会代表者会議(分代)に出ていたが、「部屋中もうもう、座席ギュウギュウ(牛々)」だった。宿直室には、筆者が「ゴッドマザー」と呼んでいた管理人のKさんがいた。その真向かいが謄写室。「トーシャ」って分かるかな?「盗写」じゃないよ。トイレは男女別ではなく、分代の時は行列ができ、腹痛でなくとも苦しい思いをさせられた(苦笑)。
■ “俺たちの城”(元委員長小室さんの口癖)をつくろう!
73年から百校計画がスタート、83年には17校の新設が予定され、分会数が150になると見込まれた。そこで83年3月を目途に、会館の建て替え工事を実施することになった。

(2)
(「旧教育会館の設計図と「高校神奈川」の速報版印刷された「共同時空」98号をご覧ください。)

82年6月、仮事務所を旧商工高(現横浜綜合高)内へ。8月から工事が始まり、翌83年5月、今の高校教育会館が竣工した(当時の分会数は143分会、組合員数は7,500名を突破)。
■ 欠番だった定期大会の議案書を発見
上に掲げた「高校神奈川」とともに、当時の定期大会議案書を何冊か見つけ出した。旧会館建設中の56年5月に開催された第11回大会、さらに翌57年の第12回大会の議案書がそれである。しかも両者は、これまで県民図書室には保存されていないものだった。
第11回大会議案書の「56年度運動方針案」には、「斗いを前進させるための自己批判」との項がある。そこでは、「すべての斗いが千七百組合員全部のものになり得なかった」「執行部の活動に種々の欠陥があった」など、8項目に及ぶ組合活動に対する弱点が指摘され、その後に「斗争の目標」と「斗いを発展させるために」との見出しが続く。議案書はわずか30ページ。今と比べると、薄く見えるが、60年前の高教組が厳しい状況下、どのような課題に直面し、その解決に向け、取り組んできたかを知ることができる。(文責・綿引光友)

今年度から、共同時空の編集は、4月から発足した資料整理委員会が行います。また、経費削減のため、4p建て、手刷りで印刷します。図書室に関する情報をこれまで以上に発信していくつもりですので、ご意見、ご要望をお寄せください。


(3)
学校図書館は、今…定時制、通信制の15年をふまえて
熊澤 弘美 
「2003年4月から県立高校夜間定時制・通信制に非常勤司書が配置される事になった」という情報に、とても驚きました。私の出身校には定時制があり、全日制と同じように図書館を利用し、司書がいるものと思っていたからです。「総合的学習の時間の本格的実施に対応する」ということでしたが、「今になって、なぜ?」と。当時、公共図書館に勤務していましたので、学校現場の困惑も伝わってきました。教員とともに授業を組み立てる困惑?2人目の司書との協働?もしかしたら、定時制・通信制の生徒に対する不安だったかもしれません。
 その4月、縁あって定時制に週2日×4Hの8時間、学校司書として勤務することになりました。この時間制約の中で、まず何を省いて、何をすべきか。生徒と向かい合ううちに見えてくるものを信じて、選び実行してきたつもりでした。しかし、生徒の個別な特性に出会うたびに模索し、学校内での孤立感や情報共有の術のない状況にもがいていた日々でもありました。成果としては、全日制の生徒や教員に「定時制の司書」と認識してもらったことぐらいかもしれません。
 現在の学校は、県内唯一の三課程併置の単位制、フレキシブルスクールです。週29Hの勤務ですが、三課程の生徒や教員(保護者も)が9時から21時まで図書館に混在し、具体的な“教育の機会均等”が求められます。より細かな配慮を必要とする図書館活動のためには、司書の常勤が重要です。定時制、通信制への非常勤司書配置から15年目の現在、19校のうち10校で勤務時間増が実現しています。また、夏休み中の図書館開館のために司書が通年雇用となった学校もあります。
全日制の司書とともに、定時制・通信制でも常勤司書がすべての生徒・教員にわけへだてなく対応できることが大切だと考えています。

(くまざわ・ひろみ 厚木清南高校 定時制)


雑誌紹介―季刊教育法193号(2017年6月刊)―
顧問個人への損害賠償請求

―大分地方裁判所の判決(2016年12月20日)をめぐる特集―
裁判の対象となったのは、大分県立高校の剣道部で起こった熱中症死亡事故である。この判決で裁判所は顧問個人に損害賠償金の一部(100万円)を負担するように命じている。特集したということはこの裁判が象徴的な事例だからである。
実際に死亡事故が起こったのは2011年夏休み中の部活動。熱中症でふらふらになったK君に剣道7段の顧問は“芝居だろう”といって、たたいたり蹴ったりした。気合いを入れたのである。これだけ見ると極端な指導で象徴的とはいえないと思う方もいると思うが、現在あちこちの学校事故をめぐる裁判で顧問個人の責任を問うケースは増えている。そういう意味では象徴的なのである。特集は判決の分析はもちろん、K君のご両親へのインタビュー、「訴訟に備えるための保険」に関するインタビューも掲載している。なお、季刊教育法は大分県の事例について187号などでも取り上げており、あわせてみることができる。