第92号

大量退職大量採用時代を迎えて
 現在、神奈川県の県立高等学校教職員は、約半数が50歳代で、40歳代は採用氷河期だったため極端に
少なく、最近になって30歳代以下が急激に膨らんでおり、非常にアンバランスな年齢構成となっている。
これを受け、県教委も「組織的な授業改善に向けて」の目的の一つとして、「教員の世代交代に伴う指導
力の継承」を挙げている(内容の是非についてはここでは触れない)。
 このような状況下、様々な方とお話をすると、「うちは職員室の雰囲気がいい」という声が聞こえてく
る学校はどちらかというと少ないのかなと感じる。どちらかというと、ベテラン層と若手層双方から、互
いに「コミュニケーションがとりづらい」という声が聞こえてきたり、人数の少ない中間層ならではのご
苦労が耳に入ってくる。とはいえ、生徒にとっての少しでも手厚い支援を実現していくためには、職員一
人一人が主体的に職場・職員集団作りに取組むことが大切だ。今の50歳代は、新採用時代、同世代が多
く、また年の近い先輩にも恵まれていた。その時とは職場の成り立ちが異なるのが現状で、その中でそれ
ぞれの世代がお互いに歩み寄って相互理解とコミュニケーションを深めていく必要がある。「批評家」で
はなく「実践家」に。最近は「オン・ザ・フライ・ミーティング」という言葉を見かける機会も増えてき
たし、難しく考えないで、みんなでいっぱい生徒の事話そうよって思う。
かながわ生徒・若者支援センターの設立
 2014年8月29日、「かながわ生徒・若者支援センター」が設立された。僕は、微力ながら事務局長の
任を仰せつかった。
 センター設立の背景には、若者達にのしかかる「格差と貧困」の問題がある。経済格差は教育格差と
連動し、「貧困の連鎖」を生んでいる。また、若者をめぐる困難は、経済的困難ばかりでなく、家庭的・
家族的困難、疾患・障がい、民族的・国籍的マイノリティ、性・ジェンダーなどの様々な要素が複合的・
重層的にのしかかっているケースも多く見られる。これらの問題の中には、比較的近年になってから生ま
れたor 議論され始めたものもある。社会が変容していく中で若者を取り巻く環境も変化しているわけだ。
僕個人的には、それに合わせて「公教育」が担う役割も変化(拡大?)していると考えている(変わらな
い役割がほとんどだけど)。
 さて、高等学校の現場では、いわゆる生活指導・進路指導・キャリア教育など様々なとりくみが行わ
れてきている。しかしながら、特に様々な困難をかかえる生徒が多く在籍する学校では、複合化する課
題への認識やその対応への専門的なノウハウの不足、教職員定数上の制約などから、個別生徒に対する
支援が不十分となり、結果として不登校、中退、引きこもり等を招き、就労に結びつかないままに社会
に送り出すケースも見られる(僕もその送り出した経験者の一人だ)。
中尾光信

2015. 2.No.92
僕達は、様々な困難を抱える若者達とどう向き合うのか
~そろそろ「若手」じゃなくなりつつあるのかな、の立場から~

― 2―
もちろん、高校に通うことが全てではないし、生徒の発達段階や家庭事情等により、様々な選択肢・生き方がある。ただ、送り出す側の僕達教職員は、特に90年代以降(さらにリーマンショックが重なり)悪化した雇用情勢や、居場所となるコミュニティーの減少や家庭機能の低下等により子ども達が孤立化しやすくなっている社会環境にも思考を巡らせた上での判断が求められていると思う。
 一方、困難をかかえる若者達の支援には、NPO をはじめとする多くの民間支援団体が活動していて、若者の相談活動、居場所確保、就労支援などに実績をあげている事をご存知だろうか。支援者の経験によると、早期発見・早期支援ほど効果が大きいと指摘されている。しかし、高校中退、卒業後は、公的な機関との繋がりが薄まり、本来支援を必要とする人の姿がさらに見えづらくなってしまう。支援対象者が高校生である場合、高等学校と連携を強く望む支援者の声も聞くが、高等学校側の垣根が高く意思疎通が難しいという。また、民間支援団体が支援を持続可能としていくための人的・財政的不安定である等の課題がある。
 以上のような課題のもと、「かながわ生徒・若者支援センター」は、高等学校を両者(高等学校と民間
支援団体)の共通のプラットホームとして(生徒が高校に在籍しているうちに、高校の中で)、このような若者達への支援の可能性を追求することを目標としている。事例研究活動、学校・支援者連携モデル事業などを行い、さらには今後、支援者養成活動、支援者仲介活動など、取組みを拡充していく予定だ。
なお、当センターは会員になっていただける方を募集中である。会員には、仕組の検討・準備過程で行う各種取組や検討素材の情報提供を行っていくので、是非ご入会いただき、仕組づくりにご参加、ご協力いただければ幸いである(団体会費: 1口10000円(年)、個人会費:1口 5000円(年)、電話:
070‒1444‒8309、メール:seitowakamono-shien@yahoo.co.jp)。

学校の「内」と「外」?
 こうした取組みを通して民間の支援者と関わっていると、「子どもの最善の利益」という言葉にしばしば出会う。これは国連で採択された国際条約である「児童の権利に関する条約(通称:子どもの権利条約)」の第3条にある「児童の最善の利益」に相当する言葉だが、高校の教育現場でこの言葉に出会うことはほとんどない。「チ
ルドレンファースト」くらいは時々耳にするかなという感じか。これは、ほんの一例だが、個人的な印象として、高校の現場教職員は、学校内(現場)の事には非常に熱心なのだが、学校を取り巻く環境・情勢については関心が薄いように思う(自戒をこめて)。学校の外では、民間、行政、政治、研究等、様々な領域の人々が教育に高い関心を持ち、様々な議論をしているし、様々な立場の人々が現場作りに関わっている。本文で触れてきたような議論についても、様々な書籍が出版されている。やや古くなるが、『脱「貧困」への政治』(岩波書店2009年)では、湯浅誠、雨宮処凜ら現場支援実践者と研究者達との議論が掲載されており、90年代~ 00年代の社会の変容、社会的に大きく問題になった事件(秋葉原連続殺傷事件等)の背景に貧困と社会的排除があったこと、若者の社会参加こそ支援すべきこと、そして、「諸価値の葛藤に耐えながら合意形成する“ 関係性” こそが重要」といったことなどを指摘している。また『ルポ労働格差とポピュリズム』(岩波書店2012年)では、公務業界でも非正規雇用の問題が深刻であること(官製ワーキングプア)や、様々な段階・部分での対立構造が新たなポピュリズムを生み出す危うさを指摘している。他、最近は荻上チキ(同い年)、古市憲寿(年下)ら様々な若手批評家・社会学者や民間支援者が情報発信をしている。そうしたいわゆる「若手」の視点を含めた多様な議論を多くの方と共有・勉強させていただきながら、僕は僕なりに、より良い現場作りに取り組んでいきたいと思う。
(横浜明朋高等学校)

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学校図書館は、今・・・もやもやに形を与える
山田恵子

 生徒はいつも忙しい。勉強に部活にバイト。読書に時間を“ 使ってしまう” のは惜しいと思っている。無駄?遊び?知的好奇心を満たすのは楽しいことで、必要なことでしょ。
 住吉の生徒の進路はほとんど進学だ。しかしあまりガリガリ勉強する雰囲気ではなく、わかりやすい本が好まれる。いまどきの絵柄でマンガになった世界史・日本史を入れてみたら、同じような要望が多数あがってきた。“ 頭がよくなる勉強法” 系もよく借りられるので、進路コーナーの棚上に勉強法コーナーも作った。レファレンスでも大学の推薦入試関係は多い。小論文、面接、志望理由書、時事問題。試験前や合格後の課題として学部に関する資料も探しに来るが、生徒にはほとんど前知識がない。教員に言われて初めて図書館を利用するような生徒も多い。ぼんやりとした、何を知りたいのか本人でもわかっていないことを調べるのなら司書のいる図書館の出番だ。
 「世界の本ない?」「世界の何?」「学校をつくる的な」「国際協力とかそういうの?」「そうそう」「新しい
本だとこれとか。分類だとこの辺。海外ボランティアも関係するかな。NGOとか」「あ、いい!どれがおすすめ?大学の課題なんだよね。あと自分の興味。読めるかな」生徒がつぶやく単語やイメージから可能性をばーっと思い浮かべ、言葉を引き出して絞っていく。書架に連れて行き、他分類からも関連しそうなものをかき集め、中見せながら読めそうな本を選んでもらう。(それも10分休みだったりして。しかし今すぐ何かこたえなければ逃してしまう!)紹介できる資料を補充して、次の来館を待ち望む。『ヘタリア』(日丸屋秀和著、幻冬舎コミックス)が好きな生徒のためにも、広がる興味に合わせていろんな本を紹介した。第一次大戦、図説の各国歴史、王朝、池田理代子のマンガ、ヨーロッパの世界遺産、教会、城、絶景、「ヘタリア」語学本、接客用英会話、海外で働く女性の体験記、留学、日本在住の外国人、異文化交流。入れるそばから喜んで借りていく。そんな子が書店で見つけてリクエストしてきた本は、ほかの利用者もよく借りていく。彼女は将来海外で働くという夢を持つようになり、世界遺産検定をとって観光ガイドになる専門学校に行きたいという。
 ある保護者が学校見学時、新着図書コーナーを見て「今は読ませたい本じゃなくて生徒が読みたい本を入れるんですね」と言った。そう見えます?こちらとしてはどうにかして「何これ!」という興味を引き出したいと思って本を選んでいる。(向こうの方の会話で「スティーブ・ジョブズ」って言ってたぞ。「テラスハウス」人気だなあ。この辺、書架の奥で借りられないけど、ひっそり読まれてる。新しいジャンルを入れてみたら手に取った、しめしめ)いつも利用者を観察し、聞き耳を立てている。さらに授業や国際理解講座で触れられたテーマ、話題になっている社会問題、進路、行事、部活、他校でレファレンスに使われたものなども日々チェックしている。ちょっとでもアンテナにひっかかって、教科書で教わる以外の知らない世界を広げてほしい。そんな気持ちで今日もせっせと餌をまく。(住吉高校)

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書評と紹介
『ニッポンの嵐』
M.Co.(角川グループパブリッシング)2011年6月 刊

 世界がニッポンに注目している。日本のアニメやアイドルは海外でも人気が高く、それをきっかけに日本に興
味をもつ外国人は多くいる。日本人よりも日本を知っている外国人も多い。日本への外国人旅行者数も増加し、その数は1200 万人とも言われている。観光立国ニッポンを掲げ、国も様々な政策をとっている。2020 年には東京オリンピックも控えている。加えて、Twitter やFacebook などSNS の普及は、私たちと世界の距離を縮めた。私たちは簡単に世界中で起こっていることを瞬時に知ることができる。世界中で活躍する人たちとSNS を通じてコミュニケーションをとることもできる。世界と私たちの距離はどんどん近くなっている。
 では、我が国ニッポンと自分の距離は近いだろうか。ニッポンの伝統、福祉、過疎化、そして文化。このようなテーマが話題になる時、それは現状の深刻さが中心になることが多いのではないだろうか。そしてこのようなテーマは、どこか漠然としていて、自分の日々の生活とどう関わっているのか実感しにくい。だから「なんだか大変なコト」くらいの認識で終わらせてしまいがちだ。私たちはニッポンの今をどのくらい知り、自分のこととして認識しているだろうか。そして教員として、これからを担っていく子どもたちに、ニッポンの今をどのように伝えていくべきだろうか。
 漠然とした大きなテーマを考える際に、その入り口は自分にとって受け入れやすいに越したことはない。そんな大きなテーマを独自の目線からまとめた本が「ニッポンの嵐」である。老若男女問わず人気のある、日本を代表するアイドルグループ、嵐。その5人がそれぞれの興味関心に基づき、それぞれが設定したテーマに沿って日本国内を訪れた旅の記録となっている一冊である。2010 年、全国の小中高等学校へ学校図書として活用されることを目的に配布された。
 大野智さんは、青森県で芸術、ものづくりを、相葉雅紀さんは関東、関西4県にまたがって介護や福祉の現場を、松本潤さんは島根県の離島で過疎化問題を、櫻井翔さんは奈良県で農業問題を、そして二宮和也さんは東京都と京都府でエンターテイメントをそれぞれ取材している。
5人の取材で最も注目したい点は、その分野に関わる若者との飾らない交流である。彼らは真摯に話を聴き、実際に体験をしながら、その仕事に携わっている若者たちからその問題の『今』を取材している。そんな様子が写真と記事からストレートに伝わってくる。きっと自分たちと同世代の若者が、ニッポンの抱える大きな問題に試行錯誤を繰り返しながら努力している姿に、尊敬の気持ちをもって取材したのだろう。彼らが見て感じ、そして伝えたいニッポンの今と未来。私たちが知らなければならないことを、嵐という入り口を通して知り、考えることができる。5人の旅はどれも魅力的であるが、私は大野智さんの弘前の旅が一番印象的であった。それは私が青森県出身で、大学時代の6年間を弘前で過ごしていたから。当時の思い出とともに、弘前の奥深さ再認識し、思いを馳せることができた。生活していた時には気がつかなかった、
気づけなかった弘前に胸が躍る。この本を通して、自分の住んでいる地域を改めて知りたくなる。自分のふるさとを知りたいと思うことが、日本の今を知ることの第一歩ではないだろうか。5 人が見て、触れて感じてきた、彼らだからこそ伝えることができるニッポンの『今』を覗いて見ませんか。
(寒川高校 𠮷田早織)

― 5―
映画時評
『Let it go』考

 この一年は「アナ雪」ブームでした。とりわけ挿入歌の「Let it go」は「ありのままで」と邦訳され、「レリゴー」と多くの人が口ずさんだとか。本稿はこの映画とこの歌について、このテの映画や音楽には無縁のオヤジの感想です。
 映画の中でまずこの曲が歌われるのは、それまで自分を抑えてきたエルサが、妹アナの結婚に反対し、すべてのものを凍らせるという魔力で「氷の王国」を作り上げる場面です。抑圧から解放され、自己を肯定し、生きる喜びと自由を手に入れるという前半のクライマックスと言っていいでしょう。そんなエルサは孤独なのですが、それを見逃してしまうと、とにかく「ありのままでいいんだ」、ということだけがインプットされてしまいます。これは危ない。自己を肯定することは誰しもが持つ願望ですが、現実にはなかなかできない。そんな欲求を、映画の中とはいえ満たしてくれるので、思わずそこに飛びついてしまうのでしょう(この映画とこの曲がヒットした理由の一つです)。しかしそれは、無数の情報が溢れ、多様な価値観が交錯し、社会的基盤があいまいで、その結果、自己
の存在や、何が是であるかという判断基準が不安定な現代において、ともかくも自己を肯定し、自己の存在だけは確定してしまおうということですから、時に危険な方向へ突き進むおそれなきにしもあらずであり、しかもバーチャルと現実との差異について、実感しにくい、もしくは意識的であれ、無意識的であれ、現実から逃避する傾向がある中では、これはどうしたって危険と言わざるを得ない。
 これで終わったらどうにも救いようのない映画となったでしょうが、エルサと王国を救おうとアナは、山男のクリストフ、トナカイのスヴェン、雪だるまのオラフと姉のもとへ行き、結果、自己犠牲を伴うところに生まれる“ 真実の愛” によって二人のわだかまりは解かれ、王国には平和が戻る、というハッピーエンドで映画本編は終わります。そして、エンドロールでもう一度「Let it go」が歌われます。この「Let it go」は前者のそれとは異なる。ここでのエルサは、孤独ではないように思えます。一応は、自分が他者を認め、また自分も他者に認められて、その上で「ありのままで」と宣言しているのがその理由です。つまり、わがまま勝手な「ありのまま」ではなく、相互の信頼関係の中での自己肯定であり自己解放であり、これがほんとうに実現すれば本来の意味での「Let it go」なのでしょう。
 ここでもオヤジは危惧してしまった。それは、本当にそれぞれが自己を肯定でき、自己を解放できるはずの世界、すなわち相互信頼のある共同体が果たして生まれるのか、またそれを生みだすにはどうするか、ということです。世にグローバル化といい、IT化といい、一見世界は近く親しくなりそうなのだが、現実にはそんな
世界の構築はひどく難しそうだ。すると、エルサがエンディングに至っても、まだ「Let it go」と歌わなければならない、「ありのままで」と宣言せざるを得ないということは、真の自己肯定、自己解放がなされていない、あるいは相互信頼のある共同体ができていないことを示していると言えはしまいか。「孤独でないように思えます。」だの「一応は」だのと記したのはそういうことです。
 それでも、この曲をあえて歌うことが理想へ近づく一歩ならば、それはそれでよしです。逆に、外的な圧力や危険な「ありのまま」によって歌うことさえ許されなくなったら、その先に待っているのはそれこそ氷の世界です。そんな状況が近い将来やって来るのではないかと思ってしまったのは、心配性のオヤジのなせるわざでありましょうか。 
 では、歌えるときに歌いましょう。「レリゴー。レリゴー……」。
(横浜翠嵐高校 青木 健)

― 6―
ふじだなのほんだなから 県民図書室は全教職員のものだ!
■ 4年ぶりの旧職員OB会
 昨年末、4年ぶりとなる追浜技高の職員OB会が開かれた。40 年以上たっても、ここではあいかわらず筆
者は若手だ。夏島会と名づけた職員OB会は、技高廃校(1976年)後に設立され、ここまで続いてきた。
 夏島会立ち上げのきっかけの1つに、同分会(開校以来10 年間のべ組合員数は38 人。ほぼ100%分会)が
廃校直前に『職場づくりの歩み』(B5 判81 ページ、75年11 月刊)という冊子を作ったことが挙げられる。最
終年度の分会員はわずか9人だったが、「技高の歴史を書き残そう」との思いから、10年足らずの分会の活
動記録と分会役員・分会員たちが綴った思い出などが収録されている。ちょうど40 年前のものだが、この冊
子を県民図書室の書架の隅で発見した時は、正直、ビックリ。筆者らが70 年代のはじめ、技高対策会議など
で配布した資料(青焼き!)もファイルに綴じられ、保管されていたが、ちょっと恥ずかしかった。
 県民図書室は84年に開室し、翌85年から貸出業務を開始した。したがって、今年度は「県民図書室開業
30 年」にあたるが、それより10 年以上昔の会議資料まで、保存されているとは思いもよらなかった。
■ 分会教研報告集や分会ニュース綴りの数々
 支部教研の報告集が並ぶ書架には、分会が作成した記録や冊子もある。残念ながらその数は多くない。一
番古いと思われる分会教研誌は、大秦野定時制分会作成の『みずなし』第1集(74年3月)だ。タイプ印刷、
41ページの冊子。当時どこかで入手した記憶があるが、こうしたものを作った分会のパワーに圧倒された。
巻頭文に「われわれが日常の教育実践のなかでかかえている問題を、文章化することにより明確化し、おの
れの教育観をあきらかにしていく」とある(79年、第6集で廃刊)。これ以外の分会教研誌、報告集として
は、西湘(77 年)、北陵(82年)、厚木(85 年)、日野(85 年)、平商定時制(84 年)などのものがある。
 分会ニュースの合本がいくつかあった。それらを丹念に読んでいくと、職場での取り組みがわかり、興味
深い。百合丘「魁(さきがけ)」は、78 年から84年までの間に発行した100 号分を2分冊にまとめている。住
吉「築(きずき)」は83 ~ 88年発行分を合本。大半はガリ版印刷のもので、懐かしい。和泉「和泉分会
ニュース・年間冊子」(2001年)は1年分(50号)が揃う。ある女性組会員が、他県教組の女性が語った
「どんなに教育委員会や管理職が攻勢をかけてきても、悲観することはありません。なぜなら、彼らは直接に
は生徒に接することができないからです。私たちこそが、授業を通して生徒たちと語り合い、考え合い、影
響を与えていくことができるのです」との言葉を引用し、「この大らかな、楽天性を見ならいたいと思いま
す」と書いている。“ 攻勢” は今日、激しさを増しているかもしれないが、大らかさと楽天性を持ちつつ、不
当な支配には厳しく抵抗したいものである。68年5月発行の平沼「分会ニュース」(ガリ版刷り)が最古か。
■ これで最後だ、ハイ・チーズ!
 最後に、「ハイ・チーズ!」ということで、次ページ掲載の地図の解説をする。この地図は、約80年前の
横浜市域図の一部。教育会館、藤棚団地が建つ場所に「第一中学」(希望ヶ丘)の文字が見える。岡野町に
「女子師範」「高女」(平沼)、南軽井澤に「第二中学校」(翠嵐)、その東側に「神奈川高女校」(神奈川学園)
の校名。偶然かも知れないが、一中の真北に高女、さらに北上すると二中が並び、一・二中(正式名称には
横浜がつく)の中間に高女が立地する。神中鉄道(現相鉄線)の終点は西横浜駅、星川は北程ヶ谷駅と呼ば
れていた。よく目を凝らすと、市電の路線網がわかる。「藤棚町」電停の開設は1913(大正2)年だ。
 連載は本号で名古屋(おわり)。所蔵資料の紹介が不十分であった点、深謝したい。「高校全教職員が協力
し資料蒐集にあたれ」(小室元委員長)の言葉を掲げ、筆をおく。
(綿引光友・元県立高校教員)

― 7―
― 県民図書室所蔵の資料案内 ―(6)
【図】昭和初期の藤棚周辺地図
 この地形図は筆者の父の遺品で、1932(昭和7)年7 月に印刷発行されたもの。「昭和3 年12 月横須賀
鎮守府御認可」の文字が欄外上部にある。原図は縦102㎝、横72㎝、当時の横浜市全域をカバーしている。
南部は磯子区まで、金沢区・戸塚区はない。保土ヶ谷区は川島町までで、二俣川は当時、都筑郡の村だっ
た。当地図は、藤棚を中心にB5 に入るよう原図(2万5千分の1)を90% の大きさにした。

― 8―
余瀝
「イスラム国」事件で自衛隊の海外派遣が話にのぼるようになってきた。戦前の日本のアジア侵
略はほとんどの名目が「日本人保護」であった。戦後この反省から平和憲法を持ったはずなのであるが。何
か「愛国者」コールが高まるにつれマスコミも腰が引けてるような気がする。
石橋 功

最近の雑誌記事より
県民図書室で定期購読入している雑誌のうち、いくつかを取り上げます。それぞれの雑誌
の掲載内容については、その一部の紹介となります。これらの雑誌は県民図書室前の廊下
の書架に並んでいます。ぜひ手にとってご覧下さい。

☆『季刊フォーラム 教育と文化』(国民教育文化総合研究所)
 2014 年秋号(77 号)特集 「教育再生」にふりまわされないために
☆『くらしと教育をつなぐ We』(フェミックス)
 2014 年10/11 月号(192 号)
  特集 水俣から福島へ ―希望を伝えあう―
 2014 年12/ 1月号 (193号)
  特集 [ 顔を知ってるあの人] の困りごとから動き出す
☆教育科学研究会編集『教育』(かもがわ出版)
 2014.11 特集1 PTA 再考
     特集2 教育のICT 化・問題と可能性
 2014.12 特集1 高校で変わる未来
     特集2 揺れ惑う科学研究
 2014. 1 特集1 人間としての教師へ
     特集2 老人と子ども
 2014. 2 特集1 子どものからだを育む文化を
     特集2 教育の民主主義を求めて
☆日本教育学会 『季刊 教育学研究』
 第81 巻第3 号(2014.9)
  特集 占領期日本における英語教育構想
     「ジェンダー教育実践」が生み出す葛藤と変容
 第81 巻第4 号(2014.12)
  特集 保育学と教育学の間
☆季刊教育法(エイデル研究所)
 2014年12月 特集 子どもの権利条約約20年の成果と課題
☆POSSE(NPO法人POSSE)
 2014 年9 月 vol 24
  特集 ブラック研修 新連載 貧困の現場から社会を変える
☆『学校図書館』(全国学校図書協議会)
 2014 年10 月号NO.768 特集 甲府大会リポート
            読書感想画指導の取組み
 2014 年11 月号NO.769 特集 子どもの読書と
                学校図書館の現状
 2014 年12月号NO.770 特集 読書ノートのすすめ
            校内協力体制による図書館運営
 2014 年 1 月号NO.771 特集 学校図書館オリエン
                   テーション
☆『教育再生』(日本教育再生機構)
 2014 年10 月号 教育再生のこれまで、そしてこれから
 2014 年11 月号 育てること、育つこと
 2014 年12 月号 今こそ、地域から学びを
 2015 年 1月号 「国史」を語る国へ
☆『季刊 人間と教育』(旬報社)
 2014 冬 84 号 特集 PISA グローバル化する学力競争
☆『家族で楽しむ 子ども農業雑誌 のらのら』
             (2014 年冬号 農文協)
 特集 畑がよろこぶ生ゴミマジック
☆『DAYS JAPAN』
 11 月号 特集 遺伝子組み替えの犠牲者たち
 12 月号 特集 動物たちの感情世界
 1月号 若者を蝕む依存症という危険
☆『世界』(岩波書店)
 11 月号 特集 ヘイトスピーチを許さない社会へ
 12 月号 特集 報道崩壊
 1月号 特集 未来を選択する選挙
☆『切り抜き情報誌 女性情報』
           (パド・ウイメンズオフィス)
 2014.10 特集 土井たか子さん逝く
        安倍改造内閣5人の女性閣僚
 2014.11 特集 職場のハラスメント2014
 2014.12 特集 子どもの虐待 どう防ぐ
☆月刊 高校教育
 2014.11 特集 変わる高校入試と入試マネジメント
 2014.12 特集 最新の実践研究と学習指導要領改訂
 2014. 1 特集 2015 年高校教育の展望
 2014. 2 特集 中教審・高校教育部会
        高大接続部会の議論を総括する

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