第106号

共同時空第106号(2021年9月号発行) Contents(ページ番号をクリックすると記事に飛びます)


1:『共同時空』、これからどうする?(畠山 未帆)


2-3
:ふじだなの本棚からvol.9「“外国につながる子どもたち”と向き合う時」(樋浦敬子)

2-3:新着案内

4面-1:学校図書館は今「2校の学校図書館を再編・統合する~高校改革(I期)非活用校の場合~」(田子環)


4面-2:雑誌紹介:「『生徒とともに』第66号 「新型コロナと学校教育」



1面

『共同時空』、これからどうする?

県立鎌倉高等学校 畠山 未帆

ある日、1通のメールが来る。「『共同時空』に寄稿していただけませんか。」最初に思う。「組合の誰も読まない出版物ってどれだけあるんだよ!」
今回の依頼で、初めて『共同時空』の存在を知った。読んでみると、なるほどよくできた冊子だと思う。テーマに沿ってどのような本があり、何が書いてあるのかがわかりやすく簡潔にまとめられている。これだけの文章をまとめることの大変さは想像に難くない。しかし、それだけ労力をかけられた冊子を紙で机の上に置かれても、たぶん読まない。なぜか。
今、「情報を提供する」こととは
今、私たちの周りには情報が溢れている。そして本はもちろん、雑誌も、音楽も、映画も、ドラマも、すべて手のひらの中にある。よく大きな本棚を眺めながら「本は文化だ」という人がいるが、今、私たちの文化は手のひらの中の小さな機械の中に詰まっている。そんな情報過多な時代を生きる私たちにとって、情報とは「やってくるもの」ではない。自分から「求めるもの」だ。知りたいことがあるから、その情報を求める。いくらいいことが書かれていたって、その人がその情報を求めてなかったら目にとまらない。だからこそ、勝手に机の上に置かれた白黒で印刷された文字だらけのプリントを、忙しいのにわざわざ読まない。「やってきた」情報に自分の求めることが書かれている可能性が低いからだ。
また、紙という媒体ですら今はナンセンスだ。できるだけ情報はデータ化し、自分の周りは整理したい。「紙がいい」という人に限って、机やら職員室の空きスペースやらに紙の塔を建てたり、雪崩を起こしたりする。ペーパーレス化を進めるには、県が一人一人に「使える」パソコンを配布すべきだし(ちなみに私の校務用PCはUltrabookで、画面は12.5インチしかないからA4サイズの文章でさえ100%で表示しても小さい)、そうして職員室が整理されれば、所謂「事故防止」にもなるのではないだろうか。
配布物を読む余裕が欲しい!
学校という場所は、とにかく配布物が多い。予定表や会議資料、生徒配布のプリントはもちろん、県の通知や組合の資料、振興会のパンフレット、企業の広報誌まで配られると、もう机の上は大量の紙で埋め尽くされてしまう。そして問題なのは、それらを見る時間を作れていない現状である。
授業や生徒対応だけではなく、年々増えていく事務仕事や分掌の仕事をこなしていくと、なかなか一息ついて配布物を眺める余裕もない。Scrap and Buildではなく、Build and Buildというのが現状で、会議や研修は年々増え、県の通知に振り回される。「配布物なんて読む暇がない!」というのが現場の叫びだ。まずはそういう働き方を見直さなければいけない。そのためにできることは何か? 今こそ、1人の教員として良い教育を提供するために、1人の労働者として適切な働き方をするために、1人の人間として豊かな生活を送るために、職場環境を見直し、「良い職場」を目指して団結すべきなのではないだろうか。
『共同時空』のような良い冊子を残すために
『共同時空』のような冊子がなくなってもいいとは全く思わない。ただ「困った時にあったら嬉しい」というもので、紙媒体で配布する必要はないのかもしれない。困った時に検索をかければすぐに情報が出てくる。困った時に頼りになるのが組合だ。そういうものとして、これからも残って欲しい。
そして、そういう冊子に目を向けられるような働き方ができる職場を目指す努力は、私たちがしなければいけない。今回、改めてそう思った。

(はたけやま みほ)

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2-3面

ふじだなの本棚からvol.9

外国につながる子どもたち”と向き合う

(※太字は県民図書室所蔵資料)

神奈川県在住の「外国人」は、2021年1月現在226,766人、1985年の47,279人の約4.8倍である。また「30人に1人」が少なくとも父母の一方が外国人の子どもと言われる時代(2014年人口動態調査)でもある。今回は、「『外国につながる子どもたち』に向き合う時」をテーマとした。

在日外国人教育―40年をこえる歴史
 『神奈川県の外国人教育~高校編―第1期(1970年~1990年)』(冊子・DVD)は、「神奈川の在日外国人教育を記録する会」が、県民図書室事業の一環として、まとめた記録・資料集である。
年表によれば1976年6月、神奈川県高等学校教職員組合(神高教)の教研組織として「『民族差別と人権』問題小委員会」(民族小委)が発足している。また、1973年、県立川崎高校で「川崎高校朝鮮問題研究会」の活動が始まっている。この冊子には、教研活動だけではなく、川崎地区を中心に各学校で多彩に展開していた個別の活動、市民団体である「民族差別と闘う連絡協議会」などと連携して地域課題に取り組んだ活動、さらには行政への働きかけなども記録されている。活動を担った第一世代が一線を去っていく中で、歴史の継承と資料保存の作業が急務であることを実感する。

クラスメイトは外国人
『まんが クラスメイトは外国人』3部作(明石書店)。3冊とも「外国につながる子どもたちの物語」編集委員会編。漫画はみなみななみさん、カラフルな表紙の色が3冊識別の手掛かりになる。サブタイトル、刊行年、表紙の色は以下である。
第1作、「多文化共生20の物語」2009年、青。第2作、「入門編―はじめて学ぶ多文化共生」2013年、赤。第3作、「課題編―私たちが向き合う多文化共生の現実」2020年、緑である。読者対象として想定しているのは中学・高校生。執筆グループの「外国につながる子どもたちの物語」編集委員会6人のうち4人は、神高教で「在日外国人教育」に熱心に取り組んでこられた方々である。
第1作は、実話の2人の話を除き、100人を超える執筆者たちの関わった子どもたちの経験・話で構成されている。
第2作は、外国につながる子どもたちと出会った、日本人の子どもたちの中学校の日常を漫画で描く。解説は、最後のあとがきの3ページにとどめているが、テーマとして「東日本大震災」「学習言語」「チマチョゴリ切り裂き事件」「入管法」「外国人は選挙できない制度」など、学んでほしい内容がしっかり盛り込まれている。外国人生徒の受け入れに消極的な学校の実態も辛らつに描かれる。
第3作は、多文化共生を妨げる10の課題に切り込む。でもあくまでこのシリーズらしく、押しつけではなく、子どもたち自身が考えられるように、丁寧に話が展開している。ネット等での誤った言説に子どもたちがさらされている「ヘイトスピーチ」や「戦争責任・歴史修正主義」、「領土」なども、子どもたちが持つであろう疑問を丁寧にすくい上げた構成で、各課題の解説もわかりやすい。

気軽に、実践、理論―さらに3冊
差別、排除につながるヘイトスピーチ、嫌韓・嫌中をあおるネット等など、子どもたちを取り巻く環境は深刻だ。そんな子どもたちに届く言葉、やり方、理論を探したい。
安田浩一『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社2017年)。いじめられっ子・いじめっ子であったと、自分の原点を見つめる著者が、外国人労働問題、「差別する人々」、沖縄などについて語る本書は気軽に読める入門書だ。著者は、上から「差別」「排除」はいけないと押しつける教育は、道徳的な教育で効果は期待できない。差別される側や排除される側の痛みや苦しみが具体的に伝わり、自分たちが議論したり考えたりして、なぜいけないのかにたどり着く工夫が必要だという。
『ちがい ドキドキ 多文化共生ナビ―在日外国人教育実践プラン集』(大阪府在日外国人教育研究協議会=府外教発行 2017年)。若い世代の教員の「どんな教材を使えばよいかわからない」「どう進めていけばいいか、相談できる人がまわりにいない」という声も寄せられる現状を踏まえて編まれたというプラン集。教材の一つに『クラスメイトは外国人』から「となりのベトナム人」が取り上げられ、2時間の授業プランが示されている。7つの教材はどれも高校でも実践可能なものであるが、中でも「マイクロアグレッション」(発言している方には相手を傷つけたり差別したりする意図はないが、その言葉の中に異なる人種、異なる文化・習慣を持つ人に対する無理解、偏見、差別が含まれている「ささいな」「見えにくい」攻撃をいう)は、身近な課題だ。府外教のホームページに本書の教材が公開されており、豊富な補足資料が掲載されている。
梁英聖(りゃん・よんそん)『レイシズムとは何か』(ちくま新書2020年)。著者はヘイトウオッチNGO反レイシズム情報センター(ARIC)の代表を務める1982年生まれの若手の研究者。
欧米諸国では「差別は許されない」ということが、法整備とともに社会規範として根づいてきているが、日本では、反差別規範を社会正義として打ち立ててこられなかった。その日本の現状が世界の中でいかに際立つのか、どれだけマイノリティに向かう暴力を許してきたのかを、歴史的背景とともに豊富な資料で本書は描き出す。そしてそこから脱却するためには、現在の被害者に寄り添う、歴史に学ぶという地点にとどまっている日本の反差別の運動ではだめだと厳しく批判し、マジョリティが取り組むべき運動として、「何が差別で何がそうではないかという真理の基準を、法や規範として打ち立てようとする」運動を提起する。新書ではあるが、分量も内容もハードだ。

※今回紹介した書籍は、県立高校退職後、大学院に入学。このほど『多文化共生教育の再構築のために──マジョリティの変容をめざす実践に着目して』で横浜国立大学から博士号の学位を授与された山根俊彦さんにご教示いただいたものである。記して感謝したい。


|文責 樋浦敬子|

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『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』 田野大輔/著.大月書店.2020.4
ナチスを体験する授業(大学)を通じてファシズムの仕組みに迫る。

 
『corona album : ときどき笑える学校図書館とコロナ対策』 神奈川県高等学校教職員組合 教研・図書館教育小委員会/[編].神奈川県高等学校教職員組合.2021.3
制限されたなかでどうサービスを提供していくか……学校司書の試行錯誤の記録写真集。

 
『教科書に見る世界の性教育』 橋本紀子ほか/編著,かもがわ出版.2018.2
 こんな教科書で学びたかった! 日本の性教育をアップデートするヒントがいっぱい!

 
『私たちは学術会議の任命拒否問題に抗議する』 人文社会系学協会連合連絡会/編,論創社.2021.2
日本学術会議って何? 任命拒否問題ってどういうこと? こうした素朴なギモンに答えるため、また多くの学会が出した声明を風化させないために、人文社会科学者が立ち上がった! 


『ポスト・コロナショックの学校で教師が考えておきたいこと』 東洋館出版社/編.東洋館出版社.2020.6
教育に携わる多種多様な分野の著者による、2020年春の時点での論点整理を緊急出版。


4-1面

2校の学校図書館を再編・統合する

~高校改革(I期)非活用校の場合~

 田子 環

非活用校となる磯子高校に、完校3年前に着任しました。3学年の生徒が揃う最後の年度でした。これまでに勤務した3校では、学校図書館をよりよく整え育てることに注力してきましたが、学校図書館を閉じるのは全く逆の仕事で、初めての経験です。募集が停止され、生徒数も予算も減る中で、できる限りの図書館サービスを維持しながら新校との統合作業を滞りなく進める「終活」。覚悟はしていたつもりでしたが、モチベーションを保つのに苦労しました。少しでも今後の再編対象校の役に立てるよう、細かく記録を残すことを意識しました。
着任した年は、完校に向けての具体的な計画がまだ立っておらず、できることといえば蔵書を除籍して少しでも身軽にしておくことでした。什器や物品も整理し、サイズを測って一覧をつくり、不用品の処分を進めました。
最終年度には、在校生が3年生だけになり、教室のある棟と図書館のある棟が離れてしまうことになりました。少しでも生徒の近くでサービスを提供するため、空き教室を一部屋借りて「図書分室」をつくりました。春休み中、教職員に書架や机と資料の移動を手伝ってもらい、最小限の本と雑誌、新聞を並べ、ソファーを置き、6人掛けの閲覧机が1つだけのミニ図書館がオープンしました。また、「朝の読書」の時間帯にはブックトラックに本を載せて教室の近くまで出前をしました。本の貸出や返却をしたり、リクエストを受け付けたりと、生徒と接する貴重な時間となりました。
2月に入ると生徒は自由登校期間となり、完校作業は最終段階になりました。図書館では、新校に持っていく図書や物品を箱詰めし、書架を空にし、2月下旬に引っ越し作業をしました。
3月、コロナ禍で完校式は中止となり、卒業式は辛うじて生徒と職員のみで行いました。残った蔵書や物品の処理はほぼ終わり、あとの日々は新校の図書館に通って、搬入した蔵書約3,500冊を書架に並べました。学校司書2人で作業ができたので、はかどりました。
活用校の司書は高校再編や図書館の引越しの経験があり、いつまでにどんな準備をしておく必要があるかを熟知していて心強かったです。今後、第Ⅱ期、第Ⅲ期と再編が続きますが、学校司書どうしでノウハウを蓄積・共有し、協力しあって乗り越えていければと思います。

(たご・たまき 県立厚木清南高等学校)  

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4-2面

雑誌紹介:『生徒とともに』第66号 「新型コロナと学校教育」

福井高教組教育研究会議/[編]. 2021.3

『生徒とともに』という誌名に惹かれ、手にとった。「66号といえば、『ねざす』は67号!」と“縁”を感じ、当欄で取り上げることにした。
福井高教組は87年、教育研究会議を立ち上げ、同誌を刊行。「『生徒とともに』が教育の原点であり、編集の基本に」ということで名付けられたという。『ねざす』を編集・発行する研究所の開所が86年だから、1歳違いの弟か妹のようなものだ。
「理論と実践を盛り込み、組合員に問題提起する」との編集方針は『ねざす』と同じ。発行元は研究会議だが、編集委員会(現場教師、研究者、執行部、研究会議研究員)が編集を担当する。研究会議専任研究員2人は退職教師だ。
特集は「新型コロナと学校教育」。2つの高校と女子短大からのレポートと高教組による「アンケート調査報告と対応の経過」が収録されている。他には、「教育実践レポート」「私の教師生活を振り返って」(5人が寄稿)などがある。「労働組合は防波堤だ」「理不尽さに抗する組合の一員であることを幸せに思う」との言葉に共感を覚える。
同誌は、B5判でタテ組みだが、総ページ数は74ページ(『ねざす』66号は76ページ)。同誌は同志だ。図書室前廊下の書架で閲覧可能。同誌以外にも他府県から届く雑誌が数冊ある。

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『共同時空』第106号(2021年9月発行) 神奈川県高等学校教育会館県民図書室 cropped-sitelogo-1.gif

発行人:畠山幸子
編集:綿引光友
印刷:神奈川県高等学校教育会館
デザイン:冨貴大介
発行:神奈川県高等学校教育会館県民図書室

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