第105号

共同時空第105号(2021年2月号発行) Contents(ページ番号をクリックすると記事に飛びます)


1life on Mars?「学校ゆるくていいじゃん」にみるわたしの学校論(佐藤彩香)
2-3
:ふじだなの本棚からvol.8「高校生の政治活動をめぐって 60年代を振り返るー」(永田裕之)

4面-1:2校の学校図書館を再編・統合する(藤井佳代)
4面-2:雑誌紹介:「コロナストレスの時代に―ジェンダー、労働、教育」『女も男も―自立・共生』136号 2020年秋号 労働教育センター



1面

life on Mars?「学校ゆるくていいじゃん」にみるわたしの学校論

神奈川県高等学校教職員組合 執行委員 佐藤彩香

今回の巻頭を執筆するにあたって、共同時空104号の巻頭文を読み返した。「生徒のための学校であるはずなのに、生徒が最も周縁化されている」という松田さんの一文が心に響いた。
自分の経験を振り返ってみても、「学校」ありきの「生徒」が思い浮かぶ。ルール、校則、社会に出たら、君たちのために…と御託を並べ、うまい具合に『学校システム』のレールに乗せる。「学校」における最大多数の最大幸福のもと形成された学校独自の価値観(それが刷り込まれた個人の価値観)とそれにもとづくシステム。多くの教員がそれに則したこたえや行動を無意識的にもとめているようにおもう。ほんとうにそれが「生徒」のためなのか、そのシステムの信頼性を議論する間もなく、わたしたちはそのなかに取り込まれている。そう考えると実は我々職員も学校から「周縁化」された存在なのかもしれない。

生徒のための学校像を考えたい
年が明けて、名古屋大学の内田良さんがTwitterで発信をした「#学校ゆるくていいじゃん」が話題となった。まさに『学校システム』の問い直しだ。これに対する反応は種々雑多で、共感を示す声もある一方、「授業が成り立たない」、「真面目な子が損をする」、「就職のためにも~」と否定的な見方もある。しかし、学校現場にいるわたしたちがひざを突き合わせてこのように「学校」の在り方を議論することはほとんどない。『学校システム』に取り込まれてしまったわたしたちは決まった価値観のなかでしか思考・行動できなくなりつつある気がする。
現実問題はさておき、わたしは『学校システム』に染まった思考・行動の枠を取り払う意味でも「#学校ゆるくていいじゃん」とおもってしまう。理想論であってもいい、現場にいる我々が「生徒」のために理想の学校像を考え、議論し、構造化するだけで十分意味があることなのではないだろうか。

生徒に合わせて学校を変える
休校や短縮授業などを繰り返す昨今の情勢だからこそ、わたしは「学校」という概念そのものが「#ゆるくていいじゃん」とおもう。中心は「生徒」、それだけが決まっていればいい。だから「学校」の中枢はどこにあってもいい。「学校」に合わせて「生徒」を変えるのではなく、個々の「生徒」にあわせて「学校」を流動的に変えるのだ。生徒を全力で支える多種多様なプロ集団、その本拠地が「学校」だ。
だとしたら絶対に文化の中心「図書館」に本部を置きたい。古代アレクサンドリアのムセイオンのように図書館と一体となった知の拠点。なんかそんなゆるい感じで教育があればいいなあと夢をみる。

自由に語るカルチャーを学校に
最後に図書館にまつわるある経験を伝えたい。在籍校ではグループ会議を図書館でやっていた。本や漫画の情報交換も活発でみんながわくわくする時間を過ごせた。まさに即興の読書会である。この自由に本について語るカルチャーがもっともっと派生して、個々の視点から意見を出し、誰も否定することなく、共有し合うような学校文化になったらいいのになあとおもう。

(さとう・あやか)

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2-3面

ふじだなの本棚からvol.8

高校生の政治活動をめぐって ー60年代を振り返るー

(※太字は県民図書室所蔵資料)

1969年、文部省は、高校生の政治活動を強く制限する通知を出した。通知には「国家、社会としては未成年者が政治的活動を行うことを期待していないし、むしろ行わないよう要請している」と書かれている。
通知から約半世紀、18歳選挙権が実現し、高校生を含めた若者の意見を政治に反映させていく必要が文部科学省の側から叫ばれるようになった。しかし約50年間、できるだけ抑え込もうとしてきたことを、転換させるのは難しい。今後、新しい指導要領の下で、どのような主権者教育を行えばよいのか、を考えるためにも半世紀前の高校生の政治活動を振り返ってみる必要があるのではないか。ここでは、文部省が通知を出す直接の原因になった「高校紛争」あるいは「高校闘争」に絞って資料を検索してみたい。
 
全体像をつかむために

県民図書室には、関連する資料があふれるほどあって、どこから、何を見たらよいのか、判断するのが難しい。そこで、『1968』(小熊英二 新曜社 2009年)を読むことで全体像をつかむことにする。上下2冊の下巻に「高校闘争」という章があるので、それだけをざっと読むことができる。
全体像をつかむために便利だと思われる資料には、他に『高校紛争』(柿沼昌芳ほか 批評社 1996年) 『高校紛争 1969-1970 「闘争」の歴史と証言 』(小林哲夫 中央公論社 2012年)『高校紛争の記録』(中沢道明 学生社 1982年)などがある。
これを読むと1950年代からの高校生運動が描かれていて高校生が政治活動の蚊帳の外に置かれていたわけではないことがわかる。
当時の時代背景のもとで、高校生の政治活動が60年代後半に急速に広まっていったのである。それが学校に波及しないはずはない。小熊は「彼らは(高校生の活動家は)社会の中で漠然とした不安と不満を抱き、『そこに自分というものを見いだせたら』という『人間闘争』として運動に参加していたのである」と書いている。具体的には受験戦争や服装規定、非行などの問題が掲げられた。

聞き取り調査から
県民図書室では、戦後の教育史の中で重要なトピックと思われるテーマで聞き取りを行っている。その中に、1969年当時翠嵐高校に在職されていた方への聞き取りがあるので、それを見ていきたい。(『神奈川の教育事情を聞く 教育聞説二』2005年による)
翠嵐高校で69年年度当初から生徒会が提起してきた問題には次のようなものがあった。


☆生徒会長、新入生の対面式でレッスン授業を差別教育と批判。
☆5月 制帽の自由化を生徒会から提案
☆某教師が生徒の前で同僚を殴る。10月、生徒会による教師の暴力追放のキャンペーン始まる。
☆10月、校長が異動。離着任式で生徒会長が前校長を追及。


10月17日、学校の制止に応じず中庭で集会、男女別クラス編成の廃止、翠嵐時報の検閲廃止、集会の届け出の自由化、英数のレッスンクラス廃止などを要求。さらに学内問題を外へ発信することを目的に「翠嵐教育解放グループ」というネーミングでデモを実施。神奈川新聞が「ゲバ抜き」「正々堂々と」「県内初のデモ」と報道。
各授業で、受験教育、評価などについて討論。1月の期末テスト(3年生)を、一部生徒がボイコット。
『戦中戦後 神奈川の教育事情を聞く』『教育聞説二』には、翠嵐高校のほかに湘南、緑が丘、川崎高校の「紛争」についての聞き取りが収録されている。 

背景 「噴出する無数の問い」の時代
2017年、国立歴史民俗博物館は〝「1968年」──無数の問いの噴出の時代“という企画展示を行い、その趣旨を次のように述べている。「1960年代後半は、日本の社会運動が、それまでの組織的な問題設定・問題解決の方式から、〝個”の主体性を重視する特徴を強く顕し始める転換期でもありました。人々は様々な問題に対し異議を唱え、あるいは改革を要求する声を、各自の居場所で、多様な形態であげていったのです。こうした新しい社会運動のスタイルは後の時代にまで大きな影響を与えました」。
高校生も、学校から、様々な問題に対して改革を要求する声をあげていったのである。『川崎中学校 高等学校六十年史』によって川崎高校の例を見ていこう。
69年3月に行われた卒業式の送辞は「教育問題、大学紛争、ベトナム、沖縄、安保など人間として当然考えねばならないことが多くあります。だから私たちはどん欲なまでに学び、考え、話し合い、そして行動しその中で自己の主体性を確立していかねばとおもうのです。」と表明していた。9月、学校祭の当日に計画されたデモ行進について学校側は合法ではあるが、教育的見地から賛成できないとして禁止した。デモは強行され、何事もなく終わったが、一部の生徒はデモを禁止した川高の教育方針を告発するようになった。
10月、3年生の教室が封鎖され、個々の教師にも問いが発せられた。
曰く「人間なのか、教師なのか」「なぜ教えるのか」「何のために(当該の教科を)教えるのか」この中で「高校性の政治活動」「職員会議の公開」「処分権への生徒の介入」「制服廃止」「生徒心得廃止」「通知表の廃止」「家庭科の男女共修」「定期テストの廃止」など多くの問題が話し合われることになった。
学校史には「紛争」についての貴重な証言が書かれていることが多い。『美なりや翠嵐 神奈川県立第二横浜中学校・横浜第二中学校・横浜第二高等学校・横浜翠嵐高等学校 創立100周年記念誌』『神中 神高 希望ヶ丘高校百年史 歴史編』など。
希望ヶ丘高校については学校史とは別に当時の生徒による記録『‘69年希望ヶ丘高校闘争の記録』(‘69年資料の会 1983年)が作成、刊行されている。この記録の著者の一人が『ねざす』(17号)で生徒参加の観点からこの闘争の意義を語っている。それによれば生徒たちは「生徒自治組織の独立性を前提とする教職員・生徒対等の共同決定機構の創出」を提起し、それによって学校民主主義回復の場にすることを主張したと。 

最後に
約半世紀間、満足に政治教育が行われなかったためか、学校で政治のことを話題にすること自体がためらわれる雰囲気ができてしまった。まずは政治を話題にし、さらに実のある対話にまでもっていくことは大変なことだと思う。60年代に高校生たちが発した問いと教師たちの応答が少しでも役に立てばよいと思う。

│文責 永田裕之│

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4-1面

2校の学校図書館を再編・統合する

~高校改革(Ⅰ期)横浜氷取沢高等学校の場合~

 藤井佳代

新校で敷地・施設を活用する氷取沢高校(活用校)に着任したのは開校2年前でした。準備期間が短くて不安でしたが、前任校での校舎建替えによる図書館の引越しの経験と、磯子高校(非活用校)の学校司書と2校2人での作業だったこと、学校図書館員研究会の再編対象高校会議で情報交換ができたことが大きな支えになりました。
学校図書館での再編・統合の課題は、備品レイアウトの問題に加えて、両校での重複する図書館資料の抽出作業と大量の図書館資料の除籍処理、登録データの統合作業、請求記号(ラベル記号)のルールの見直しと修正作業、新校の学校図書館運営方針・利用規則の検討など様々あります。バーコード登録番号については、再編対象高校会議で検討して新校での共通ルールを決めました。
活用校は準備期間も生徒数が減らず、学校行事や図書館運営は例年通り行いつつ新校に向けての準備作業もしなければならないので、とても大変でした。生徒数によって増減する私費の図書費も非活用校では減額していきますが、活用校では例年通りの予算額を執行します。また、書庫での作業は、閲覧室に生徒がいない時間に限られてしまい、冷暖房がないので夏場と真冬の期間は、ほとんど作業ができませんでした。
段ボール箱の確保方法や、書架解体・組立作業は業者依頼か職員か、備品類と図書館資料の搬入日程などの引越し関連事項については、校内予算の関係があるので早めに相談して要望しました。新校開校後は学校司書が1人になってしまうので、2人で作業ができる期間と不用備品類を図書館内から搬出できる時期を考慮して2月下旬に日程を決めてもらいました。当日は、学校司書がそれぞれ搬出・搬入の様子をスマホで連絡を取りながら業者に指示できたのがとても便利でした。3月に2人で搬入した資料・物品の整理をしました。
今回の再編・統合では、活用校の校舎内での図書館の移設はありませんでしたが、前任校のような校舎建替えや改修工事を伴う場合、県の学校図書館設備基準がないため、書庫や図書整理室のスペースが充分に確保されない図面が提示されたりして、図書館側の要望がなかなか理解されず苦労することがあります。今後も県立高校の再編・統合や改修工事はあるので、なるべく早く根拠となる学校図書館設備基準をつくってほしいです。
また学校図書館のスペースは限られているので、図書館の引越し予定がなくても日常業務として年度内に受入れした図書館資料数と同程度の除籍をしておくことがとても大事で、職員や生徒にも日頃から理解してもらうことが大切だと思いました。

  (ふじい・かよ 県立横浜氷取沢高等学校)

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4-2面

雑誌紹介:「コロナストレスの時代に―ジェンダー、労働、教育」

『女も男も―自立・共生』136号 2020年秋号 労働教育センター

コロナ禍で苦しんでいるのは誰か
本誌は、1998年春『季刊 女子教育問題―自立・暴動・連帯』をリニューアル、タイトルを改め刊行した季刊雑誌。教育現場の声をひろいながら、教員が直面する課題に焦点を当て、また国内外のジェンダー平等を目指す動きにも目配りを欠かさず、毎号タイムリーな特集が組まれている。
2021年1月23日の朝日新聞朝刊一面に、次の衝撃的な見出しが躍った。「自殺11年ぶり増 女性大幅増:小中高生過去最多」。今号の特集は、昨年来のコロナ禍で、いったい誰が苦しんでいるのか、何が課題であるのかを俯瞰してみせる。主な収録論稿を紹介したい。
●Part1:しわ寄せは女性労働者に
女性の休業比率は男性の3倍以上―被害は子育て女性に集中/コロナ労働相談の半数以上は女性非正規労働者/「在宅ワーク70%」で見過ごされる「家庭内のワークライフバランス」
●Part2:“異例の事態”に向き合う学校現場
教育現場で、ソーシャルディスタンスが当たり前になる不安/保健室でのかかわりを大切に、感染症への差別を子どもたちと一緒に考えたい/コロナ禍で広がる教育格差/働きながら学ぶ外国人留学生を襲ったコロナ禍
●Part3:『ステイホーム』のかけ声の陰で
コロナ禍とDV/居場所のない若者―『家』は必ずしも安全な場所ではない/コロナ禍における10代の「予期せぬ妊娠」―相談から見えた社会の課題

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『共同時空』第105号(2021年2月発行) 神奈川県高等学校教育会館県民図書室 cropped-sitelogo-1.gif

発行人:畠山幸子
編集:樋浦敬子
印刷:神奈川県高等学校教育会館
デザイン:冨貴大介
発行:神奈川県高等学校教育会館県民図書室

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