第102号

共同時空第102号(2019年9月号発行)
Contents(ページ番号をクリックすると記事に飛びます)


1面:『かながわ平和通信』のバトンを引き継いで(新井敦子)
2-3面:ふじだなの本棚からvol.5「今、話題の「給特法」って何?―県民図書室の資料からたどる歴史・今日の課題―」(永田裕之)
4面-1:再任用学校司書は ただ今奮闘中(武藤 尚子)
4面-2:雑誌紹介「子どもの権利の新たな地平」『子どもの権利研究』30号(2019年3月30日)」

102


1面

「『かながわ平和通信』のバトンを引き継いで(新井敦子)

「平和」を発信し続けて

「沖縄に関わるのは、出会ってしまったから」
沖縄平和ネットワークの代表村上有慶氏の言葉だ。1997年、夏、沖縄。高文研ツアーのバスの中で、私もその言葉に出会ってしまった。
祝日には日の丸を掲げる家に育ち、学校で戦争について習った記憶を持たない私は、日本がアジアの国々に与えた加害の側面など知るはずもなく大学生活を謳歌していた。「戦争が本当に起きないと思っているの?」と友人に煽られても危険な思想としか思えなかったあの頃の自分は、どれだけぬくぬくと「権利の上に眠っていた」ことか。今となっては忸怩たる思いだ。
私を変えたのは、教職に就いてから出会った『平和通信』であり、平和運動推進委員会の仲間が導いてくれた沖縄修学旅行との出会いだった。
2017年3月。179号を読んで愕然とした。30年以上編集を担ってきたKさんが担当を降りると宣言していたのである。「続けましょう。私が編集を担当します」思わずそう宣言している自分がいた。
今回、 『平和通信』への思いを記す機会を得たことを契機に創刊号から繙いた。創刊号の特集は「沖縄」。巻頭の「君は沖縄を見たか」では、「私達は沖縄を見なければなるまい。地獄を見るのは誰もいやだ。この世で地獄を体験せぬためには見なければなるまい。」と高らかに謳う。1985年2月1日発行である。
当時は毎月1日に発行。定価100円。7号からは年間1500円の定期購読も開始。8号では、「高校生交流会in沖縄」での「今の日本は本当に平和なのか」という議論に対して、「教科書などで事実が伝えられない日本は平和ではない。」という高校生の声も拾う。
大きなテーマを「平和」に据えて、沖縄だけでなく、広島、長崎、アジア、パレスチナ、基地、アイヌ、部落、外国につながる生徒の人権問題など、実に幅広く現地を歩き、自ら調べ、人と繋がりながら意識を高め合っている姿勢に圧倒された。

「原発」へ警鐘を鳴らし続けて

もう一つのテーマが「原発」だ。3号の特集が「原発」で、「アメリカのパートナーとして日本は、今までの『核の被害者』から『核の加害者』となりつつある」という箇所は、現在をまさに暗示する。
154号(2008.1発行)の特集は「原発炎上」。中越地震をきっかけに組まれた特集だが、私は思わず3.11の事故後の発行かと錯覚した。それほど的確に安全神話が崩壊したことを指摘し、地震の危険性を警告していたのである。「刈羽原発の黒い煙は原発の未来を警告している」という結びはあたかも預言者のようだ。
福島原発の事故は必然がもたらしたものであり、その警告をもっと真摯に受け止めるべきだった。

『平和通信』でつながる!!

『平和通信』には様々な思いが詰まっていた。「基地の街でピースフル子育て」の連載も懐かしい。基地の街で育った彼も高校2年生だ。先輩方の「若かりし頃」の原稿にも再会した。そして思った。「書くこと」によって、知り、出会い、そして読み継がれる。
『平和通信』から私が受け取った平和の創り方は、「団結」「持続」「継承」。皆、糸偏がつく。そうだ。たとえ弱々しい糸でも結び合い、過去から紡がれたものを未来へ繋げられたら、平和への糸口が見いだせるはずだ。
一人ではできない。でも「あなた」がいればできる。多くの「あなた」と『平和通信』に携わりたい。
(あらい あつこ)

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2-3面

ふじだなの本棚からvol.5
今、話題の「給特法」って何?―県民図書室の資料からたどる歴史・今日の課題―
(※太字は県民図書室所蔵資料)

◆「給特法」とは?
「給特法」の正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」で、対象としているのは公立の、小、中、高等学校(中等学校を含む)の教育職員である(『教職員の権利ハンドブック①教職員の勤務時間』日教組)。「給特法」は「教育職員には原則として時間外勤務を命じない」こと、どうしても必要な場合は次の業務に限って時間外勤務を命じることができる、とした。

① 生徒の実習に関する業務
② 修学旅行等学校行事に関する業務
③ 職員会議に関する業務
④ 非常災害、児童、生徒の指導に関し緊急  の措置を必要とする場合の業務

その上で、教育職員には4%相当の教職調整額を支給し、時間外勤務手当、休日手当を支給しない、労基法32条の5までと37条の適用を除外することとした。

◆突然注目されるようになった「給特法」
あまり注目されることのなかった「給特法」が、働き方改革や部活動などと関連して俄然脚光を浴びるようになった。教員の世界にも過労死があり、サービス残業もあるということが皆に知られるようになり、一気に関心が高まった。
2018年11月発刊の『POSSE vol.40』(NPO法人POSSE)は「教員労働問題と教育崩壊」というテーマで特集を組み、「給特法を産み落とした戦後教員労働運動の『献身性』」(佐藤隆執筆)を、『現代思想』2019年5月号(青土社)は「教育は変わるのか」という特集の中で、「教師の定額働かせ放題=『給特法』問題はいかにして広まったか」(斉藤ひでみ執筆)を掲載している。単行本の『教師のブラック残業』(内田良・斉藤ひでみ編著、学陽書房 2018年)の副題は「『定額働かせ放題』を強いる給特法とは?!」である。

◆「給特法」はなぜ生まれたか
教員には戦後もずっと超過勤務手当が支払われてこなかった。一方、超過勤務手当に関する規程の適用を排除する措置もとられなかった。日教組は1965年、大会で「超過勤務手当の支給を要求」した(『日教組五十年史』323p以下)。また、各地で教組が「超勤手当支払い請求訴訟」を起こし、超勤手当の支払いを命じる判決が出された(『戦後日本教育判例体系』5 労働旬報社 61p以下)。
この超勤問題を解消するために、定率の手当を支給し、その代わり労基法の適用をはずすという「給特法」が1971年成立した。日教組は計測できない労働には手当の支払いを、計測可能な労働には労働基準法に基づいて割増賃金を要求し、ストを構えたが、文部省と交渉を行い、合意することとなった(『日教組五十年史』326p)。給特法制定までの経過、考え方については『季刊教育法』(1972年春号)掲載の「教職特別措置法と教職調整額」がある。この論文は人事院の実務担当者が書いたもので、法案を立案した側の考え方がよくわかる。

◆神奈川県での交渉、合意
日教組と文部省との間で行われた協議に基づいて神奈川でも交渉が行われ、合意に至った。交渉の経過、合意内容については『教職特別措置法に関する闘い』(神教組) がくわしい。ここで取り交わされた取り決めは1990年代までの間、学校現場の「働くルール、慣習」となったと思われる。その基本的考え方は教員の勤務時間管理をゆるやかにして、学校外の勤務も可能としたり、自主的な研修も勤務時間の中に含めるというものであった。すでに『共同時空』(99号)で書いたが、この時、部活動についても、交渉対象になっている。

◆1990年代~2000年代の変化 
組合と県教委との詳細な合意により、超過勤務は厳しく監視されるはずであったが、さまざまな点でほころびも生じた。たとえば給特法の登場までまったく野放しだった部活動だが、公式戦で休日に出勤すれば必ず一日の代休取得が可能になった。最初はこの代休を取得する人もいたが、毎日必ず授業がある全日制では代休をとれば授業を休むことになる。シーズンには毎週試合があり、授業に補欠を付けなければならない学校もある。そのため代休ではなく、特殊業務手当をもらう人が増えることになった。また、練習試合では代休は取得できなかった。特殊業務手当については『教員特殊業務手当問題について』(神高教職場討議用資料99-01)を参照。
学校を取り巻く状況も変化した。1980年代に入ると中学校には“荒れる”という言葉がつくようになり、教師は生活指導に追われるようになった。高校では百校計画が進み、県立高校ではそれまで受け入れることのなかった学力の低い生徒を迎えるようになった。
1991年、横浜学校労働者組合のメンバーが、超過勤務が増え、教育委員会も了解している回復措置が行われなくなっている、として提訴した。回復措置というのは「給特法」制定時に横浜市教委と浜教組との間で行われた交渉で取り決められたものである。この裁判は原告側の敗訴となり、判決は「組合と教育委員会の協定自体が違法」とした(『横校労働き方読本Ⅳ 教員超過勤務裁判の記録』横浜学校労働者組合)。
2000年になると神奈川県教育委員会は「教職員の勤務における服務の厳正な取り扱いについて」を通知してそれまでの職場慣行を全面的に見直すことになった。「給特法」に伴って行われてきた教員の勤務のゆるやかな時間管理は全面的に見直されることになったのである(『神奈川教法研ニュース』第157号)。

◆新しい超勤裁判
増え続ける時間外勤務を背景に、1988年以降、超過勤務手当を請求する裁判が起こされている。1960年代と違うのは裁判の結果が原告側の全敗であるということである。この間の裁判の結果について多くの論文を書いているのは労働法学者の萬井隆令(龍谷大学法科大学院)である(「公立学校教師と時間外労働」『龍谷法学』第38巻1号、「公立学校教師の超勤問題について」『労働旬報』No.1610 など )。萬井は、判決や「給特法」を厳しく批判しているが、「給特法」は労基法36条を適用除外しておらず三六協定を結ぶべき余地があるとも主張している。最近では埼玉県の小学校教諭が「残業が常態化しているのに残業代が支払われないのは違法」として提訴している(https://twitter.com/trialsaitama?lang=ja)。

│文責 永田裕之│

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4-1面


再任用学校司書は ただ今奮闘中(武藤 尚子)

ここ数年、職場では再任用職員が珍しくありませんが、学校司書も徐々に増えつつあります。
退職時には勤務年数とは関係なく異動することになっているらしく、現任校に残る例はないのが現状です。定年後あと数年だけ勤めたいと思っていても異動することになってしまいます。短い年数で新しい勤務先の学校の特性を把握し、前任者の仕事を引き継いだ上に、年度ごとに変化の多い昨今の学校現場に対応した図書館運営を築いていくことは容易ではありません。本人の希望があれば残れるようにして欲しいです。
それだけでなく、一人職種なので、再任用だからといって日々の業務は軽減されないのです。にもかかわらず、この4月からは5級(副主幹)から4級(主査)に格下げになり、その分減給されてしまいました。再任用職員の人数が多いためということですが、「同一労働同一賃金」にはほど遠い状況にあります。
私の勤務校は単位制なので、1時限開始前から生徒が図書館の前で開館を待っていることが珍しくありません。利用されることは大歓迎でとてもやりがいがあるのですが、オーバーワークにならないよう、仕事の時間配分を考え、体調管理には細心の注意をして過ごしています。
勤務時間もフルタイムか29時間に限られています(29時間は条件付き)。それぞれに合わせてもっと柔軟に「働き方」を選べるよう20時間も可能にして欲しいです。
継続して勤務の場合、年休は繰り越すことができるのですが、私の場合あわてて前任校から既取得日数の根拠となる書類を取り寄せました。パソコンのIDは認証が進まず、校内のデータにアクセスできるようになるまで1カ月以上待つことになりました。通勤手当も順番が後に回ってしまったようで、支給されたのが8月でした。
といったように着任時には細かい事でバタバタして、なかなか通常のペースで仕事を進めるようになりませんでした。
また、介護休暇に関しては、継続して再任用する場合でも3月に1度区切ることになるので、3月までの日数に制限がかけられています。
毎年のように少しずつ変化する書類や制度に1つずつ対応していくためには、他の再任用司書との横のつながりは絶対に欠かせない状況です。
まだまだ改善してもらいたいことはあるのですが、今までの経験を活かして働くことができる場があるのはとても幸せなことだと感じています。図書館を必要とする生徒や教職員のお役に立つよう、これからも仕事を続けていきたいと思います。
(むとう・なおこ 県立横浜栄高校)

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4-2面


雑誌紹介「子どもの権利の新たな地平」『子どもの権利研究30号』
2019年3月30日
子どもの権利条約総合研究所/編集・発行
日本評論社

●子どもの権利条約採択30年、批准2年 現場はどう変わったか
今年は国連が子どもの権利条約を採択して30年、日本が批准をして25年にあたります。編集・発行の非営利特別活動法人子どもの権利条約総合研究所は、「子どもの権利条約に関する総合的でかつ実践的な研究をすすめることを目的として、研究者・専門家、医師、教職員、施設職員、議員、自治体職員、NPO・NGOスタッフ等が参加するなかで、2002年3月に設立」された組織です。30号では2本の特集が組まれています。

●特集Ⅰ 多様な背景をもつ子どもの権利
総論の「子ども権利の条約と多様な背景をもつ子どもの権利」(平野裕二)に続いて「障がいのある子どもの権利」(崔栄繁)、「性的マイノリティの子どもたちの権利」(土肥いつき)、「在日の子どもの権利―桜本から 在日の こどもを 考える」(朴栄子)、「外国人の子どもの権利」(鈴木雅子)、「医療的な支援を必要とする子ども権利」(田中恭子)、「社会的養護のもとで育つ子どもの権利」(木ノ内博道)を掲載しており、今日の課題がよくわかります。

●特集Ⅱ 子どもの権利条約第4回・5回統合日本審査と総括的所見
子どもの権利条約批准国は、履行状況を報告する義務があり、その報告書審査が「国連・子どもの権利委員会」により、今まで3回審査が行われ、勧告が出されてきました。今回は第4回と第5回の統合審査で、日本政府への勧告案をまとめた総括的所見が2019年2月7日に採択されました。その解説と資料紹介が特集Ⅱです。
高校現場は25年間、こどもの最善の利益に留意してきたのか、今日の課題に対応できているのか等々、本書を通して検証してみてはいかがでしょう。

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『共同時空』第102号(2019年9月発行)
神奈川県高等学校教育会館県民図書室
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発行人:畠山幸子
編集:樋浦敬子
印刷:神奈川県高等学校教育会館
デザイン:冨貴大介
発行:神奈川県高等学校教育会館県民図書室

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